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- 作者: 夏目漱石
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/09
- メディア: 文庫
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身震いするような日本語。
「民族主義」と言われます。
でも、壁は厚い。
小説や詩や絵や建築は
同じ血と
同じ文化を
共有している人にしかわからないと思う。
わかってもらう必要もないし、
わかってたまるか
といいたい。
『アメリカの大学に来ると留学しようかどうか迷っていた自分の大学院生時代を思い出す。
当時は経済的なこととか、単位交換がいまほど易くなかったし、修論の仮題目提出などの日程もその前後の指導期間の設定もいまよりもタイトで、一年間留守にするには相当本格的に前倒しして義務を果たさなければならず、まるで出来ないというわけではなかったが、自信がなくて、修了までの時間が延びてしまうかも知れないなどの具体的な問題を悩んでいた。
しかし本当のところでは日本語を捨てるかどうかを悩んでいたのかもしれないと思う。
留学してしまったら、日本語の、生暖かくもデリケートな部分を相手にするような研究はしなくなるだろう。
英語でも論証可能なテーマにするだろう。
どうする?
というのが本当の悩みだったように思うのだ。
言い換えれば翻訳可能なものを相手にするか、翻訳不可能なものの存在を、たとえ幻想であれ、追いかけてみるかという悩み。
結果的に後者を選んで今に至るわけで、考えてみると当時の選択は結構大きかったように思う。
こうやって人生のポイント・オブ・ノーリターンのようなところを、そうとは思わずに幾つも通過して来たのだろう。』